次世代スマートロック標準規格「Aliro(アリロ)」とは?Matterとの違いや最新動向を徹底解説

次世代スマートロック標準規格Aliroの解説

Aliro(アリロ)1.0は、スマートフォンやスマートウォッチを「世界共通のデジタルキー」にするための統一規格です。 IoT標準化団体のConnectivity Standards Alliance(以下、CSA)が2026年2月26日に正式リリースしました。ドアごとに専用アプリを入れ替える必要をなくし、自宅もオフィスもホテルも、同じ方式の認証情報をApple・Google・Samsungのウォレットで扱えるようにすることを狙っています(施設ごとのアクセス権は、それぞれの発行元から受け取る形になります)。

CSAが公開した仕様書(195ページ)にあたって、次の点を確認しました。

この記事で分かること
  • Aliro(アリロ)1.0とは何か、いつ何が公開されたのか
  • NFC・BLE・UWBの3つの通信方式がそれぞれ担う役割
  • Matter規格との違い(競合ではなく役割分担である理由)
  • 自動車のデジタルキー(CCC Digital Key)との関係(ここを正確に書いている日本語記事はほとんどありません)
  • 日本のFeliCa/おサイフケータイはどうなるのか
筆者・監修者
 ビズファンSDGs担当@bizfun

株式会社ビズファンは、2017年9月1日に東京都港区で設立されました。広告代理事業やメディアマネタイズ支援、IoT事業、ビジネスインキュベーション、フィットネス事業など幅広い分野で事業を展開しています。SDGs推進にも積極的に取り組んでおり様々な自治体にSDGsパートナーとして認定されている。さらに、様々な環境保全活動にも賛同し、参加している。

目次

Aliro(アリロ)スマートロック規格とは?

Aliro(アリロ)は、Connectivity Standards Alliance(CSA)が推進する「アクセス認証の通信プロトコルと共通クレデンシャル(デジタル認証情報)」の標準化プロジェクトです。2023年11月に構想が発表され、2026年2月26日に「Aliro 1.0」として公式仕様がリリースされました。

長年、スマートロックや入退室管理システムの領域は、メーカーごとに独自の規格・通信プロトコル・専用アプリが乱立する断片化した市場でした。ドアごとに違うアプリを起動しなければならない不便さ、ベンダーロックインによる維持費、OSアップデートのたびに発生する改修コスト。各社が独自に解錠方式を増やしてきた経緯も、裏を返せば共通規格が存在しなかったことの表れです。Aliroはこれらを一つの標準にまとめることを狙っています。

Apple、Google、Samsungという世界のモバイルOSおよびウォレットエコシステムを主導する3社が対応を確約している点が、この規格の特徴です。各社のネイティブなウォレットで扱えるようになれば、ユーザーはサードパーティ製アプリを介さずにOSレベルで解錠できることになります。ただし各ウォレットでの提供開始時期は、後述のとおり公式には確認できていません。

Aliroの4つの基本原則

Aliro規格の設計思想は、以下の4つの基本原則から構成されています。

  • 安全性(Security):高度な暗号化技術と、オフラインでも機能する認証システム。
  • シンプルさ(Simplicity):スマートフォンをポケットに入れたままシームレスに解錠できる体験。
  • 柔軟性(Flexibility):住宅、オフィス、ホテルなど、あらゆるユースケースに適応できるアーキテクチャ。
  • 相互運用性(Interoperability):メーカーやブランドの垣根を越えて、Aliroに準拠・認証された機器どうしが共通して動作するための枠組み。あらゆる既存機器がそのまま動くという意味ではなく、対応するリーダー・端末・ウォレットが揃って初めて成立します。
仕様が定めている範囲(2026年8月時点)

Aliro 1.0の仕様書が規定しているのは、リーダー(電子錠側)とユーザーデバイス(スマホ等)の間のNFC・Bluetooth LEインターフェースです。

> “The scope of this document is the NFC and Bluetooth LE interface between a Reader and User Device to provide the Reader with the necessary information to make an access decision.”

一方、リーダーとアクセス管理システムの間、ユーザーデバイスと認証情報発行元の間は対象外と明記されています。

> “Other interfaces such as between Reader and Access Manager or between User Device and Credential Issuer are out of scope.”

出典:CSA『Aliro Specification Version 1.0』§1.1(文書番号 26-42802-001、2026年2月18日)

なお日付には2つあります。仕様書がCSA理事会で承認された初版日が2026年2月18日、対外的な正式発表が2026年2月26日です。参加企業について、CSAは発表時に「220社超」としていますが、仕様策定に直接関わった企業の正確な社数は公表されていません。

Aliroが使う3つの無線通信方式(NFC・BLE・UWB)

Aliroが用いるNFC・BLE・UWBの3つの無線通信方式のイメージ図

Aliro 1.0は単一の通信技術に依存せず、既存の無線通信技術を適材適所で組み合わせています。設置環境やユースケースに応じて、以下の3つのトランスポートレイヤーを選択・連携させます。

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通信技術技術的特性とAliro規格における役割セキュリティおよびユーザー体験(UX)への寄与
NFC(近距離無線通信)リーダーにデバイスを直接かざす「Tap-to-Unlock」の基盤技術。数センチメートル以内の近接通信(13.56MHz)に特化。リーダー側の磁界から電力を得るパッシブ通信が可能。バッテリー切れ時の解錠は端末の予備電力・ウォレット・リーダーの実装に依存するため、対応の有無は機種ごとに確認が必要。
BLEユーザーがドアに接近した際の初期通信、認証情報の事前ハンドシェイク、および長距離通信(2.4GHz)を担う。デバイスがポケットや鞄に入った状態での通信開始トリガーとして機能。低消費電力でのバックグラウンド通信に適する。
UWB(超広帯域無線)電波の飛行時間(Time-of-Flight)を利用したセンチメートル単位の空間測位(Ranging)とハンズフリー解錠を実現。ユーザーがドアの「内側か外側か」「直前にいるか」を判定。電波の不正中継による「リレーアタック」への耐性を高める。

特にUWBの標準サポートは、アクセス制御が長く抱えてきた課題への対応にあたります。従来、BLEの電波強度(RSSI)のみに依存したハンズフリー解錠は、環境ノイズによる精度のばらつきから、意図しないタイミングでの解錠を引き起こす原因となっていました。UWBの導入により、ユーザーの位置をより正確に把握できるようになります。

仕様が必須としているNFCの種類

CSAの公式仕様書は、リーダーとユーザーデバイスの双方に対し、NFC-A(Type 4A / ISO-DEP)への対応を必須(SHALL)と定めています。

> “The Reader SHALL be able to poll for Technology Type NFC-A and SHALL support T4AT Platform and ISO-DEP protocol as defined in [22].”

この点は、後述する日本のFeliCaとの関係を理解するうえで重要になります。

出典:CSA『Aliro Specification Version 1.0』§10.1

Aliroのセキュリティとオフライン認証

Aliroのセキュリティモデルは、非接触型決済(Tap-to-Pay)システムで採用されている暗号化基盤を踏襲しています。認証プロセスがリーダー(電子錠側)とユーザーデバイス(スマートフォン等)の間で直接かつローカルに実行される「ポイントツーポイント(Point-to-Point)」通信にもとづいている点が、このアーキテクチャの中心です。

クラウドサーバーや外部ネットワークへの接続を必要とせずに認証が完了するため、地下駐車場やエレベーター内、災害による通信障害時など、安定したインターネット環境が存在しないオフライン環境下でもアクセス制御が機能します。CSAの公式発表も、適用場面として「電波の届かない地下駐車場やエレベーター」を明示的に挙げています。

解錠までの流れ(Expedited phase と Step-up phase)

Aliro 1.0の仕様書は、1回のアクセス(トランザクション)を3つのステップで定義しています。このうち3つ目は任意(OPTIONAL)で、常に実行されるわけではありません。

> “The transaction consists of 3 steps. The third step is OPTIONAL.”

STEP
トランザクション開始(Transaction initiation)

物理層とトランスポート層を初期化する処理です。この部分はトランスポートプロトコル(NFC・BLE・UWB)の側で定義されています。

STEP
Expedited phase(必ず実行される)

ユーザーデバイスが秘密鍵の所持を証明するフェーズです。最小限のコマンド数と時間で、相互認証または一方向認証を行います。「既知の端末のときだけ動く」といった条件付きの仕組みではなく、仕様書はリーダーが要求すれば常に実行されると定めています。 > “As a result, a User Device will therefore always perform the expedited phase if requested by the Reader.” リーダーがこの証明だけでアクセスの可否を判断できれば、この時点で解錠して終了します。仕様書は判断できる場合の例として、リーダーが別の手段で認証情報を受け取っている場合、公開鍵をキーにアクセス管理システムへ照会できる場合、以前のStep-up phaseで得たデータを保持している場合を挙げています。

STEP
Step-up phase(判断できないときだけ)

Expedited phase だけではアクセス可否を判断できなかった場合に限り、リーダーがユーザーデバイスへ「Access Document」を要求します。 > “If the Reader cannot make an access decision based on the expedited phase, it can request the User Device for an Access Document.” Access Documentには、アクセス認証情報の公開鍵と、必要に応じて署名済みの追加情報が含まれます。オフラインかどうかや、初めての端末かどうかが発動条件として規定されているわけではありません。

つまり「速い経路と、確認が要るときの経路」を分けることで、多くの場面では1段階目だけで解錠を完了させ、判断材料が足りないときにだけ追加のやり取りを行うという設計になっています。

出典:CSA『Aliro Specification Version 1.0』§8.1、§8.1.1

また、AliroはAppleのHome Key等で用いられるEnhanced Contactless Polling(ECP)技術の概念を拡張して取り入れています。Aliroアプレットには専用のTCI値が割り当てられており、同一のモバイルウォレット内にHome KeyとAliroの認証情報が共存していても、端末が衝突を起こさず適切な認証情報を提示するルーティングが構築されています。

なお仕様書は、Aliroプロトコルの実行に用いるセキュア環境(Secure Element等)の要件を定義していません

> “This version of the specification does not define requirements on the secure environment, such as Secure Element, to be used for Aliro protocol execution.”

出典:CSA『Aliro Specification Version 1.0』§11.11

Matter(マター)との違いと相互補完関係

Aliro規格の位置づけを理解するには、同じくCSAが策定・管理するスマートホーム標準規格「Matter(マター)」との関係を整理する必要があります。

結論から言えば、AliroとMatterは独立した並行プロジェクトですが、相互補完の関係にあります。CSAの概念モデルでは、Matterはネットワーク空間における「管理人(Caretaker)」、Aliroは物理的な境界に立つ「ドアマン(Doorman)」と表現されます。

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比較次元Matter規格(管理人 / Caretaker)Aliro規格(ドアマン / Doorman)
コア機能と目的デバイスの全体管理、状態監視、リモート制御、ホームオートメーションへの統合デジタル認証情報とリーダー間のセキュアな通信、アクセス権限の検証、物理的な施解錠の即時実行
通信アーキテクチャネットワークベース(Wi-Fi, Thread, Ethernetを利用したIPルーティング通信)ポイントツーポイント(NFC, BLE, UWBを利用したデバイスと錠の直接通信)
インフラ依存性ローカルネットワークへの接続が前提(Thread構成の場合はボーダールーターが必要。Wi-Fi・Ethernet構成では不要)ネットワークに接続せずローカルで認証が完結する
対象デバイス範囲スマートホーム全体のあらゆるデバイス(照明、空調、カメラ、ブラインドなど)「アクセス制御(出入り口の認証と施解錠)」という特定用途に特化

この役割分離が、両規格が競合せずに共存できる根拠です。Matterはスマートロックのバッテリー残量確認、夜間の自動施錠、遠隔からのリモートアンロックといった「コマンド&コントロール」を担います。対してAliroは、人が物理的に近づいたときのセキュアな認証(鍵穴に鍵を挿す行為のデジタル化)を担います。

役割が重ならないため、1台のスマートロックが両方に対応することも技術的には可能です。実際、後述するNordic Semiconductorのように、AliroとMatterのデュアルスタックを前提にした開発環境を提供している半導体メーカーもあります。ただし「今後の製品は両対応が主流になる」と言えるだけの公式なロードマップは、2026年8月時点では確認できていません。

Aliroは自動車の鍵にも使えるのか(CCC Digital Keyとの関係)

Aliro 1.0は、自動車用デジタルキーとして必要な車両固有の機能を規定していません。 車の解錠・施錠・エンジン始動・キー共有を標準化しているのは、CSAではなくCar Connectivity Consortium(CCC)の「CCC Digital Key」です。

ここは誤解が生まれやすい部分です。AliroとCCC Digital Keyは、どちらもNFC・BLE・UWBという同じ無線技術を使い、どちらも「スマホを鍵にする」規格だからです。しかし標準化団体も、対象とする領域も別です。

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項目Aliro 1.0CCC Digital Key
標準化団体Connectivity Standards Alliance(CSA)Car Connectivity Consortium(CCC)
主な対象建物・施設のドアや開口部、アクセスリーダー車両へのアクセス、施錠・解錠、始動、車両機能
登場する主体User Device、Reader、Credential Issuer などMobile Device、Vehicle、Vehicle OEM Server など
無線技術NFC、Bluetooth LE、Bluetooth LE+UWBNFC、Bluetooth LE、UWB
鍵の共有1.0では対象外(将来フェーズで検討)Digital Keyの共有を規定
車両固有機能規定しないエンジン始動、パッシブエントリー、車両操作など

CCC公式は、Digital Keyを次のように定義しています。

> “The CCC Digital Key™ is a standardized ecosystem that enables mobile devices on any operating system to securely store, authenticate and share Digital Keys for smart vehicles.”

一方、CSAが公式発表で挙げるAliroの適用対象は「企業のオフィス、大学、宿泊施設、戸建・集合住宅」および「電波の届かない地下駐車場やエレベーターなど」であり、自動車への言及はありません

ただし「無関係」ではない

注意が必要なのは、Aliro 1.0がCCC Digital Keyを技術的に参照している点です。Aliro 1.0の仕様書は、参考文献としてCCCの『Digital Key Technical Specification Version 4.0.0』を挙げ、BLE/UWB関連の一部をそこから読み替えて使っています。

> “Without loss of generality, occurrences of ‘vehicle’, ‘Device’ and ‘DK’ in section 19.4 in [2] can be replaced with ‘Reader’, ‘User Device’, and ‘Aliro’, respectively for the purposes of this specification.”

> “The MAC layer of the UWB-related functionality of Aliro is defined in section 20 in [2]. Here we describe the extensions to section 20 in [2] that are relevant to Aliro.”

出典:CSA『Aliro Specification Version 1.0』§2 References、§11.11、§12.1

つまり両者は、同じ技術的土台を共有しながら、対象領域を分けているという関係です。

「Aliroは自動車を対象外と明記している」という書き方は正確ではありません。

仕様書本文に “automotive is out of scope” のような逐語的な記載は存在せず、”automotive” という語自体が1度も登場しません(”vehicle” は上記のCCC仕様読み替えの文脈で1回のみ)。

正確には、禁止しているのではなく、車両側に必要な機能を定義していないという状態です。将来のフェーズで領域が広がる可能性は、現時点の公開情報からは判断できません。

(2026年8月14日時点、仕様書全文を確認)

いつ、どの製品からAliroを使えるのか

Aliro 1.0の公式リリースに伴い、チップセット(SoC)から最終製品に至るサプライチェーンが規格への対応を進めています。CSAが発表時に名前を挙げた企業には、Apple、ASSA ABLOY、Google、Infineon Technologies、Last Lock、Samsung Electronics、STMicroelectronics に加え、Allegion、Aqara、HID、Kastle、Kwikset、Nordic SemiconductorNuki Home SolutionsNXP Semiconductors、Qorvo が含まれます。

半導体レイヤーでは、それぞれ次のような形で対応が進んでいます。

  • Silicon Labs:マルチプロトコルワイヤレスSoC「MG24」で、Aliroの暗号化プロセスをハードウェア・アクセラレータによって処理します。統合SDKには検証済みのNFCトランシーバードライバが組み込まれており、単一のファームウェア実装でGoogle Wallet、Samsung Wallet、Apple Walletにまたがる相互運用性を確保できるとしています。
  • Nordic Semiconductor:「nRF54LシリーズSoC」を中心に、AliroとMatterのデュアルスタックをネイティブにサポートする開発環境を提供しています。
  • NXP Semiconductors:ワイヤレスMCU「MCX W7x」に、UWB測位用チップ「SR150」とAliro対応NFCコントローラー「PN7642」を組み合わせたモジュール式のリファレンスデザインを提供しています。
  • STMicroelectronics:Aliro向け実装「X-CUBE-ALIRO」を提供しており、NFC Forum Type A の認証を取得していると記載しています。

製品側では、スマートロック・メーカー各社が認証プロセスを進めています。下表は2026年8月14日時点で各社が公表している内容にもとづくものです。認証状況・発売時期は変動するため、導入を検討する際は必ず各メーカーの最新発表をご確認ください。

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企業・ブランド名製品モデル名各社が公表している内容(2026年8月14日時点)
AqaraSmart Lock U400Apple Home Keyに対応済み。UWBを利用したハンズフリー解錠、指紋認証、Matter-over-Threadに対応。Aliro対応についてはメーカーの最新発表を確認のこと。
Durin, Inc.Durin Door ManagerSilicon LabsのMG24 SoCを搭載。既存の電子錠に追加してAliroアクセス機能(NFC/UWB)を付与するレトロフィットデバイス。
Allegion(Schlage)Sense Pro Smart DeadboltUWB対応スマートデッドボルトとして発表。発売時期についてはメーカーの発表を確認のこと。
KwiksetHalo Select Plus市場流通しているMatter対応モデル。KwiksetはCSAの発表に名前が挙がっているが、本製品のAliro対応について確認できる公式発表は見つかっていない。
NukiKeypad 2 NFCNukiのプレスリリースは、本製品を「住宅向け電子錠として世界初のAliro認証キーパッド」と位置づけている(”the world’s first Aliro-certified keypad for electronic door locks in the private residential sector”)。2026年8月14日時点で販売中($179)。

なおCSAの認証データベースには、2026年2月26日付でNXPの開発プラットフォームとKastleの壁付けリーダー「EverPresence KR100」がAliro 1.0の認証製品として登録されています(記事末尾の参考リンク参照)。

世界最大のロックメーカーであるASSA ABLOY(アッサアブロイ)および傘下のYale(エール)は、CSAの発表で名前が挙がっている一方、初期の認証取得製品リストには登場していません。この理由についてASSA ABLOYからの公式な説明は確認できていないため、本記事では推測を述べません。

ウォレットや社員証としてどう使われるのか

Aliroによってアクセス制御業界が得る最大の変化は、Apple・Google・Samsungのネイティブな「デジタルウォレット」インフラへ直接乗り入れられるようになった点です。

従来、スマートフォンをデジタルキーとしてOSレベルで機能させる仕組みは、OSごとに分かれていました。特定のOSベンダーのエコシステムに閉じた方式では、他のOSの利用者や、企業が個別に導入している入退室管理システムとの連携が課題になります(連携の可否は、ウォレット・認証情報の発行基盤・リーダーそれぞれの実装によります)。Aliroは、この分断をベンダー非依存の共通プロトコルで埋めようとするものです。

CSAは公式発表で、主要なモバイルウォレット事業者から確約(confirmed commitment)を得たと述べています。

> “confirmed commitment from the world’s leading mobile wallet ecosystems. By aligning with Apple, Google, and Samsung”

この時点で確認できるのは「対応を確約している」という段階までです。各ウォレットでAliroの提供が実際に開始された時期・対応OS・対応端末については、2026年8月14日時点で各社の公式発表を確認できていません。導入を検討する際は、利用予定のウォレットの最新情報をご確認ください。

企業利用の面では、これまでのオフィスの入退室管理システムが特定ベンダーの独自RFIDカード(MIFARE、iCLASS等)に依存し、ベンダーロックインが起きていました。Aliroが想定しているのは、企業のIT部門が従業員のウォレットへ直接「コーポレートバッジ(社員証)」を発行する形です。ただし実際に発行できるかどうかは、ウォレット事業者と認証情報の発行基盤それぞれの実装によります。Kastle SystemsはAliro互換のコーポレートバッジの提供を発表しています。

ホテル業界では、宿泊予約と同時にゲストのモバイルウォレットへデジタルルームキーがプロビジョニングされ、フロントデスクを経由せずに客室へ入るという運用が想定されています。

アリロは日本で使えるのか(FeliCa・おサイフケータイとの関係)

日本のFeliCaインフラとAliroの関係を示すイメージ図

Aliro 1.0の仕様に、日本のFeliCaは含まれていません。 ただしこれは「FeliCaが使えなくなる」という意味ではなく、同じスマートフォンの中で、FeliCa(Suicaや社員証)とアリロが別々のサービスとして共存する形になります。

以下、その根拠を順に示します。

仕様上、AliroとFeliCaは別の方式

前述のとおり、Aliro 1.0が必須としているNFCは NFC-A(Type 4A / ISO-DEP) です。一方、FeliCaはNFC-Fとして扱われます。FeliCa Networksの公式資料も、FeliCaを「FeliCa™ (NFC-F)」と明記しています。

同じ13.56MHz帯のNFCではあるものの方式が異なるため、既存のFeliCaリーダーでアリロをそのまま使えるわけではありません

確認した事実(2026年8月14日時点)

CSA『Aliro Specification Version 1.0』の全文(195ページ)を確認したところ、“FeliCa” および “NFC-F” という語は1度も登場しません

また “NFC-B”(Type B)の記述もなく、仕様が必須要件として定めているのは NFC-A のみです。Aliroの対応方式をType Bまで含めて説明している解説を見かけることがありますが、仕様書の記述はNFC-Aに限られます。

同じ端末の中では共存できる

では日本のユーザーはFeliCaを諦めることになるのかというと、そうではありません。FeliCa Networksの公式資料は、セキュアエレメント(SE)を搭載した端末について次のように説明しています。

> “Devices equipped with the SE chip support NFC, which enables FeliCa, Type A and Type B communication with readers installed in stores, etc.”

つまり1台のスマートフォンの中で、FeliCa(Suica等)とType A(アリロ)が別々のサービスとして併存すること自体は、技術的に可能です。おサイフケータイで改札を通り、同じ端末でアリロ対応のオフィスのドアを開ける、という使い方が想定できます。

ただしこれは技術仕様から導ける帰結であって、公式のロードマップではありません。

CSA、CSA Japan Interest Group、FeliCa Networks、NTTドコモのいずれも、2026年8月14日時点で、AliroとFeliCaの共存や置き換えに関する具体的な方針を公表していません。今後の各社の発表を待つ必要があります。

日本での推進体制

CSAは日本市場向けに「Japan Interest Group」を設置しています。公式ページによれば、同グループは70社を超える企業で構成され、活動目的の一つとして「MatterとAliroを中心とした、日本におけるアライアンス活動の推進と認知度向上」を掲げています。

> “The Japan Interest Group is currently comprised of over 70 companies” > “Promoting and increasing awareness of Alliance activities in Japan, with an initial focus on Matter and Aliro.”

同グループは2024年5月28日に発足しました。日本独自の地域要件(Regional requirements)を、適切なワーキンググループを通じてグローバル規格へ提案することも活動目的に含まれています。

日本国内のスマートロックベンダーや住宅設備メーカーにとっては、既存のFeliCaインフラとアリロをどう並行稼働させるかが実務上の論点になります。ただし、個別企業の対応方針について公表された情報は限られており、本記事では確認できた範囲にとどめます。

Aliroの普及には何が残っているのか

Aliro 1.0は、アクセス制御業界のビジネスモデルを変えうる規格ですが、普及にはいくつかの段階が残っています。

ハードウェアのコモディティ化:Aliroの普及により、スマートロック・メーカーは「独自アプリの開発と保守」というソフトウェア負債から解放されます。一方でデジタルキーの管理はウォレット側に集約されるため、錠前そのものの差別化は「モーターの静音性」「バッテリー寿命」「デザイン」といった物理的な価値へ回帰していくと考えられます。

移行期間の長さ:社会インフラ全体が移行するには、レガシーシステムの耐用年数を考慮すると相応の期間を要します。認証プロセスと市場投入のタイムラグも残ります。その間も、顔認証や手のひら認証など複数の解錠方式に対応した製品のように、各社が独自方式で利便性を高める動きは続くと考えられます。規格への対応と、製品ごとの機能の充実は別の軸で進みます。

機能の追加は今後のフェーズ:CSAのFAQは、鍵の安全な共有(一時的なゲストキーの発行など)について「将来のフェーズで評価するユースケース」と位置づけています。

> “Aliro is interested in evaluating use cases such as secure key sharing in future phases.”

現行の1.0でできることと、これから追加される可能性のあることは、分けて考える必要があります。

よくある質問(FAQ)

Aliroについて特に質問の多い5点を、本文の該当箇所とあわせて整理します。回答はいずれも2026年8月14日時点でCSAおよび各メーカーの公式情報から確認できた範囲であり、製品の対応状況や提供時期は今後変わります。

Aliro(アリロ)規格に対応したスマートロックはいつ頃から買えますか?

2026年2月26日に仕様が正式リリースされ、各メーカーが認証プロセスを進めています。AqaraやNukiなどのブランドから対応製品、または既存製品のファームウェアアップデートによる対応が予告されています。具体的な発売時期は各メーカーの発表をご確認ください。

Matter規格のスマートロックを持っていますが、Aliroとは関係ないのですか?

MatterとAliroは補完関係にあります。Matterは「遠隔からの鍵の開け閉めや家電連携」を担い、Aliroは「ドアの目の前でスマホをかざして開ける(または近づくだけで開ける)」役割を担います。役割が重ならないため1台で両対応することも技術的に可能で、両方に対応した開発環境を提供している半導体メーカーもあります。ただし今後の製品が両対応で統一されるかどうかは、2026年8月時点で公表された情報からは判断できません。

スマホの充電が切れても鍵は開けられますか?

AliroはNFC(近距離無線通信)をサポートしており、リーダー側の磁界から電力を得るパッシブ通信を利用します。このため、スマートフォンのバッテリーが枯渇した状態(予備電力モード)でも解錠できる設計です。実際の動作は端末とリーダーの実装によります。

日本のFeliCa(Suicaなど)はどうなりますか?

Aliro 1.0の仕様が必須としているNFCはNFC-A(Type 4A / ISO-DEP)で、FeliCa(NFC-F)は仕様に含まれていません。そのため既存のFeliCaリーダーでAliroをそのまま使うことはできません。ただしFeliCa Networksの公式資料によれば、セキュアエレメントを搭載した端末はFeliCaとType Aの両方に対応できるため、1台のスマートフォンの中で別々のサービスとして共存する形になると考えられます。なお、CSAやFeliCa Networksから共存・置き換えに関する公式のロードマップは、2026年8月時点で公表されていません。

アリロで自動車の鍵も開けられますか?

Aliro 1.0は、自動車のデジタルキーとして必要な車両固有の機能(エンジン始動、キー共有など)を規定していません。車のデジタルキーを標準化しているのは、CSAではなくCar Connectivity Consortium(CCC)の「CCC Digital Key」です。ただしAliroの仕様書はCCC Digital Key 4.0.0を参照しており、BLE/UWBの一部技術を共有しています。両者は「同じ技術的土台を使いながら、対象領域を分けている」関係です。

参考・引用元(一次情報)

本記事は、規格標準化団体であるCSA(Connectivity Standards Alliance)の公式仕様書・公式発表、およびメーカーの一次情報にもとづいています。

参照した一次情報の一覧を開く

Aliro 1.0 仕様書(本記事の中核となる根拠)

  • CSA『Aliro Specification Version 1.0』文書番号 26-42802-001(理事会承認:2026年2月18日、195ページ)

https://csa-iot.org/wp-content/uploads/2026/02/26-42802-001_Aliro_1.0_specification.pdf ※本記事で引用した §1.1(Scope)、§2(References)、§10.1(NFC要件)、§11.11、§12.1 は、2026年8月14日に全文を取得して確認しています。

CSA(Connectivity Standards Alliance)公式

Car Connectivity Consortium(自動車デジタルキー)

FeliCa / 日本市場

半導体・ハードウェアメーカー公式

モバイルエコシステム

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